泉が森湧水・イトヨの里泉が森公園

1日の湧水量4,320トンを誇る

史跡「泉が森」は、奈良時代の常陸風土記に「密筑の大井」としてその名が記されており、千年以上も清らかな水がこんこんと湧き出る泉です。1969年には、茨城県指定文化財史跡に定めらており、歴史的にも価値の高い森として知られております。この森の一角に「イトヨの里泉が森公園」があります。泉が森湧水およびイトヨの里泉が森公園の湧水は、2008年に平成の名水百選に選ばれています。

歴史ある泉が森

泉が森一帯は、常陸風土記に「村の中に湧水あ…湧き流れて川となれり」や「男女会集いて…楽しめり」と記されており、江戸時代には常北10景として選ばれている歴史ある森です。戦後は、この一帯から湧き出る湧水を利用して、ニジマスの養殖などが行われていたことがあります。

あるとき、泉が森に住宅造成計画が起こりました。そのときに地元の市民運動推進会が、イトヨの保護と自然環境を守るため親水公園化の請願書を市に提出しました。市はこれを受けて親水公園化をしました。公園名は募集を行った結果、地元の小学生によって「イトヨの里泉が森公園」と決まりました。

イトヨが生息している森

泉が森にある養殖地周辺には、全国的にも数ヶ所の湧水にしか生息していない淡水魚のイトヨが昔から棲んでおり、地域住民にあたたかく見守られてきました。

イトヨは北半球亜寒帯に広く分布し、日本でも山口県と利根川以北に分布しています。2007年の環境省レッドリストでは、イトヨには福島県以南の陸封のイトヨ太平洋型と、本州のイトヨ日本海型が「絶滅のおそれのある地域個体群 (LP) 」に記載されています。

このイトヨは湧水地に生息する体長5cmほどの淡水魚です。イトヨはとても貴重な特徴を持っています。それは、繁殖期になると雄が巣作りから子育てまでするという独特の習性を持っているということです。幻の魚と呼ばれる所以です。

イトヨは鮭と同じで、川で生まれた稚魚は海へ下って成長し、産卵前に川をさかのぼる回遊(遡河回遊)を行います。海まで降りずに淡水域に留まって成長をするのは、陸封型といいますが陸封型の個体もいます。

イトヨの見た目は、トゲウオ科に所属しているため、とげが非常に多く、背中には背びれの棘条が3本離れて発達し、さらに腹に2本、尻びれ付近にも1本とげがあるのが特徴です。泉が森のイトヨは陸封型で、いつの頃から住み着いたのか正確な記録がありません。しかし、少なくても半世紀はど前には生息していることが確認されています。昭和40~50年代には、地元の高校の生物の先生方で、定期的に調査を行っていたこともあります。泉が森のイトヨは、こうして地元の方々の努力によって守られてきました。

地域の人々の意見が反映されているイトヨの里泉が森公園

平成13年の5月、日立市水木町の住民の発意によって、行政とパートナーシップを組んで作られたのがイトヨの里泉が森公園です。イトヨの里泉が森公園は、イトヨの保護、自然環境を守るため、地域の人たちの意見を反映させながら作られた公園です。発案、設計・施工にわたるまで、地域の知恵を結集してつくられた園内には、湧水の滝やイトヨの観察デッキ、水遊び場等が設けられています。地元の子どもたちの遊び場、大人たちの憩いの場となっています。毎年、様々なイベントが行われいて、ホタル祭り、花壇造り、イトヨ観察会、100 万人のキャンドルナイトなどが行われています。

保全環境

地元の公園里親団体「イトヨの里泉が森公園運営委員会」によって環境が園内の整備が行われています。

アクセス

JR常磐線「大甕駅」下車して徒歩11分。車の場合は常磐道常陸南太田ICで降りて16分